・・・・・・★六ヶ所村を取り巻く最近の状況★・・・・・・
日本原燃は18日、六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で、工場完成の最終段階となるガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)製造試験を再開した。試験の 実施は2008年12月の中断以来、約3年半ぶり。東日本大震災や東京電力福島第1原発事故による影響などで工程には既に大幅な遅れが出ており、10月予 定の完成時期は延期が確実。(中略)
第1段階の「事前確認試験」では、B系炉で高レベル廃液の組成を模した非放射性の模擬廃液を使い、最大20本の固化体を作った後、実際の廃液を使い、最大40本製造する。この後、A系炉で模擬廃液を使って最大20本を作る計画だ。
茨城県東海村にある実規模大試験炉で得られたデータと比較、評価し、課題の温度管理状態などに問題がなければ、実廃液を使った第2段階の「安定運転・性能確認」に入る。
この後、国の使用前検査を受け、合格すれば、工場完成となる(後略)。
【解説】
工場完成の最終段階となるガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)製造試験は、07年11月に始まって以来、炉底に白金族と呼ばれる重い金属がたまる等、数々のトラブルで何度も中断されてきた。昨年4月に再開する予定だったが、大震災などの影響で大幅な遅れが出た。今回の製造試験は、これまでトラブルが発生したのとは別の、高レベル放射性廃液を使用していないB系炉で始まっていたが、ことし1月に、今度はB系炉で流下ノズルに炉内レンガ片が詰まってガラスの流下速度が低下するトラブルが起き、ここまでずれ込んでいた。試験再開に向けては今月7日からガラスビーズの流下確認、11日から温度計などの作動を確認する作業を行い、ともに問題がないことを確認している。しかし実際の試験では、B系炉に実廃液を投入した段階で、想定通りに固化体を製造できるかが最初の関門となる。白金族対策の成果が試される、ここでの結果によって、国に事業指定を申請した1989年から数えて18回、事業指定を受けた92年からは15回も延期されてきた工場完成の行方が左右されそうだ。ただし、核燃料サイクル見直し議論(再処理の必要性も不明)のさなかに再開にかじを切ったことについて、菊川慶子さん(花とハーブの里)も「(再処理を選択肢に入れる)アリバイづくりのアクションにしか見えない」と批判している(http://cgi.daily-tohoku.co.jp/cgi-bin/tiiki_tokuho/kakunen/news/news2012/kn120619c.htm)。
2)国では原発事故を受け、核燃料サイクル政策の見直しが進んでいる
国の原子力委員会(近藤駿介委員長)は21日、今後の核燃料サイクル政策について、柔軟性を持たせることを重視し、政府が国策として進めてきた全量再処 理路線の転換を強く意識した最終報告書をまとめた。原発の使用済み核燃料の再処理と直接処分の「併存」が有力とし、全量再処理の選択の余地を狭めた内容と なった。近く政府のエネルギー・環境会議に提出する。
■核燃料サイクル政策の選択肢
使用済み核燃料の処分方法として(1)全量再処理(2)再処理せず、全て地中に埋める全量直接処分(3)再処理と直接処分の併存―を想定。原子力委員会 は、30年の原発比率0%の場合「全量直接処分が適切」、15%の場合「併存が適切」、20~25%の場合「全量再処理が有力。ただし、将来の不確実性を 重視すれば併存が有力」とした。政府のエネルギー・環境会議はこれらを基に7月から国民的議論を行い、8月にも新たなエネルギー政策を決める。
安全評価の審査開始/サイクル4施設
経済産業省原子力安全・保安院は22日、六ケ所村内にある使用済み核燃料再処理工場など核燃料サイクル4施設に関する安全評価(ストレステスト)の審査 を開始した。地震や津波によって安全機能を喪失した場合の安全上の余裕度について、事業者の日本原燃が実施した評価の妥当性を確認する。
今回の審査は、再処理工場の試運転段階での評価に基づく。原燃は18日にガラス固化体の製造試験を再開したが、工場完成前には再びストレステストを実施する必要がある。
審査の対象は、再処理工場のほか、高レベル放射性廃棄物一時貯蔵施設、低レベル放射性廃棄物埋設施設、ウラン濃縮工場。昨年11月に保安院が原発だけで なくサイクル施設にもストレステストを指示したのを受け、4施設を管理する日本原燃が実施し、4月に結果を報告した。
1/11付け読売新聞【六ヶ所】ガラス固化体、最大140本製造へ
——福島第1原発事故後に核燃料サイクル見直し論が浮上している——
◆影響するいくつかの要因を下記の新聞記事を参考にして挙げる。◆
六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で、2008年12月から中断しているガラス固化体製造試験は当初、4月に再開される予定だったが、東日本大震災の影響による電力不足もあって見合わせた。原燃は試験再開後に実施する計画だった各種作業を前倒しして実施。2台あるボイラーの法定点検は6月下旬に始まり、7月に故障が発生したものの、作業は8月13日に終了した。8月15日、日本原燃は、固化体(高レベ ル放射性廃棄物)製造試験の再開に向けて、技術的な準備が整ったと発表した。ただ、施設の安全対策をめぐる青森県の判断を待つ必要があり、再開時期は依然、見通せない状況だ。
b) 再処理工場でも安全評価 /保安院が検討(2011.7.23デーリー東北)
原発の安全評価に関連し、経済産業省原子力安全・保安院は22日、取材に対し、使用済み核燃料再処理工場を含む六ケ所村の核燃料サイクル施設も、実施の方向で検討を進めることを明らかにした。評価方法によっては、来年10月の工場完成に向けたスケジュールに影響を与える可能性がある。 核燃料サイクルの要となる再処理工場は、使用済み核燃料プールを持ち、高レベル廃液を取り扱うことから、原発と同様に緊急安全対策やシビアアクシデント(過酷事故)対策の対象となった。対象施設や評価手法などは今後、検討される見通し。現状でも完成に向けた工程は「きつい 状況」(川井吉彦日本原燃社長)で、安全評価の対象になればスケジュールがさらにずれ込む可能性もある。
c) 電気事業連合会は国内でプルサーマルを「15年度までに16~18基で実施」としていたが、実際にプルサーマルを手掛けた原発は4基で、現在、実際に発電しているのは関西電力高浜原発3号機(福井県)だけ。原発事故の余波で、実施に必要な地元了解の取り付けは困難とみられ、目標達成は厳しい。
・高速増殖炉がウラン資源の利用効率を数十倍に高めるとされるのに比べ、プルサーマルは1~2割の節約効果にとどまる。一部の専門家は「多大なコストとリスクを負ってまで進める意味はない」と指摘する。
d) 六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場で取り出すプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX) 燃料の本来の供給先とされた高速増殖炉は、1995年のもんじゅのトラブルで開発が長く停滞している。そして来年度の高速増殖炉研究開発費が本年度当初予算から7~8割削減する方針が示され、開発は凍結される(原型炉段階で見直しの検討対象)。将来的なMOX燃料の供給先(高速増殖炉)を失えば、再処理工場の存在意義も薄らぐことになる。さらに、代替として生まれたプルサーマルの難航が続けば、再処理工場に加え、MOX工場の必要性が問われることになる。(再処理工場で取り出すプルトニウムは行き先を失う)
e) 六ヶ所村のMOX燃料加工工場(昨年10月着工)の建設が東日本大震災の影響で工事が中断しており、再開の見通しは立っていない。
f) 英国MOX工場閉鎖 核燃サイクルに影響も日本でのプルサーマル実現に疑問を投げ掛けたとも言える。
参照:
1) 英国MOX工場閉鎖(2011.08.05デーリー東北)
2) 再処理工場、薄らぐ存在意義(2011.07.16デーリー東北)
3) 再処理工場でも安全評価/保安院が検討(2011.07.23デーリー東北)
4) 固化体試験再開なお見通せず/再処理工場 (2011.08.16デーリー東北)
●東日本大震災の影響
青森県六ケ所村にある再処理工場で使用済み核燃料貯蔵プールから放射性物質を含む水が地震によりプールの周りにこぼれた。
●2年延期と4000億円の増資(電気料金へ)を決定
中部電力浜岡原発5号機(御前崎市佐倉)で昨年5月4日、政府の要請によって運転を停止した直後に、復水器から海水約400トンが流入し、約5トンが原子炉内にも入ったとされるトラブルで、中電は3日、炉内の全核燃料872体を1日に取り出し、燃料プールに移したと発表した。
8月22日から海水流入の影響を調べるため燃料の取り出しを始めていた。(中略)中電は年内を目標に炉内の点検や燃料検査を実施する方針。(後略)
中部電力は21日、浜岡原発(御前崎市佐倉)の敷地とその周辺で初めて津波の
堆積物調査を実施し、過去の津波発生状況を調べると発表した。東日本大震災を踏まえて、国が原発の敷地周辺で津波堆積物調査の必要性を指摘しているため。
調査期間は8月~12月の予定で、延長する可能性もある。
(後略)